ボクシングを始めた

 昨日からボクシングを始めた。

 といっても、プロを目指しているわけではない。試合もたぶんできない。医者に止められるだろうから。この2年近く仕事が忙しくて10kg以上増加した体重を何とかしたいと思っていたところへ、近所にジムができた。ちょうどボクシングに興味が湧いていたところだったので、この偶然を楽しんでみることにしたというわけだ。

 だから、「ボクササイズ」を始めた、というほうが真実に近いかもしれない。でも、いいじゃないか、ちょっとくら見栄を張っても。入門するに当たって「ボクササイズコース」という区分はなかったので、ボクシングを始めたと言っても嘘にはなるまい。試合もできればしたいしね。

 まず体験見学をさせてもらう。よほどのことがない限り、入門する気だが、まぁ念のため。

 最初にやることは当然ながら柔軟運動。それだけで、かなりの体力を消耗してしまうのが情けないところだ。わたしは身体が硬い。

 次の縄跳びは省略して、シャドウボクシングを習う。
 まずは構えから。わたしは右利きなので、右構えだ。
肩幅くらいに足を広げ、右足を後方に引き、かかとを浮かす。重心は中央に。
左拳は目の高さ、左目のすぐ左に置く。右拳はアゴの右直近に。
脇を締め、アゴを引く。やや前屈みになって上目遣いに鏡に映った自分を見る。

 そう、シャドウは鏡の前でする。けっこう恥ずかしいが、フォームをチェックするためと、的を示すためだ。

 最初は左ジャブから。構えているポジションから、そのまままっすぐ鏡の自分のアゴに向かって打ち出す。肩を入れてからだを開き、左腕をまっすぐに延ばし、仮想のインパクトの瞬間に左拳を内側にひねる。打ち終わったらすぐ腕をひいてガード位置に戻す。肩を入れていることは、左顔面を守る役割もある。

 これがなかなか難しいのだが、偶然ましなフォームで打てる瞬間があると気持ちいい。うまく打てた感じの時は、目で見てもそれなりに見える。

 これだけでもう汗びっしょりだ。

 次に、1-2(ワン・ツー)を習う。ジャブもまともに打てないのに、と驚いたが、飽きさせないための工夫なのだろう。そして、実はありがたかった。左ばかり打っていて、左ばかり動かすのが少し辛くなっていたのである。これも理由かもしれない。

 左ジャブを打って引くと同時に、ガード位置からそのまま右拳をまっすぐアゴの位置に向かって打つ。足のひねり・腰の回転から入って、一瞬遅れて腕が振り出されるような感じで打ち出す。

 これがまた難しい。フォームが乱れる。重心がずれる。1をきっちり打とうすると2が遅れる。2を意識すると、1がいい加減になる。

 さらに、1-1-2を習う。左ジャブが一つ加わるだけなのだが、リズムを取るのがいっそう難しくなる。

 次に、「ミット打ち」をする。ここで初めてグローブをつける。バンテージは巻かなかった。軍手をはめることで代用。なるほど、最初はそれで十分だろう。8オンスのグローブだったが、体力を考えると妥当なところ。

 ジャブと1-2を練習。うまく当たるといい音がして気持ちがいい。ほとんど当ててもらっているのだが、それが分かっていても嬉しい。

 別の練習生の女性がやってきたことをきっかけに(?)、終了して一緒に柔軟をする。女性の入門者は10人ほどいるそうだ。

 入門することにして、申込書を書く。ちょっと驚いたことが二つ。

・シンナーなどの薬物中毒の既往症があれば書くように、という指示があった。
  ヤバイ人がくるのかねぇ。

・拇印を押すことになっていた。しかも左右両方の。
  手が汚れるのはありがたくなかったが、まぁいいや。

 できれば明日も来たい旨を告げてジムを後にする。

 できれば、と書いたのはちょっと心配があったからだが、不幸にして当たった。
筋肉痛だ。
 ただ、意外な場所が痛かった。背中が痛い。それと尻。
広背筋などがヒットマッスルと言われるのを実感してしまった。普段の生活ではあまり使わない筋肉なんだろうな。

 今日はまともなトレーニングは難しそうだ。

 軟弱者にふさわしい結末。
 まぁ、無理せずゆるゆるやろうと思う。