リーチの意味

「リーチ」、というのは「腕の長さ」のことだと思っていた。ところがボクサーのデータをそう思って読むととんでもないことを想像する羽目になる。たとえば、クリチコ(WBCヘビー級世界チャンピオン)は2m近い長身とはいえ、リーチはそれ以上、80インチ(2メートル)になっている。


手の長さが2メートル? ふつうに立っていて床に手が着いてまだあまるぞ。


実は、ボクシングでのリーチは両手を広げたときの右手の指の先端から左手の先端までの長さのことだった。


これについては辞書にも間違っているものがあった。三省堂大辞林』では、「ボクシングで、手の長さ」と書かれている。わたしと同じ間違いだ。なお、広辞苑には「ボクシングで、左右に伸ばした腕の両先端の間の長さ」と正しく書かれている。


これを知ったのも実は最近なのだが、けっこう不思議だった。肩幅が広くて腕が短くてもリーチがあることになるけど、それって変じゃないか? 肩幅がやたら広くて腕が短かったら、相手にパンチ届きにくいぞ?


これが間違いであることは、ジムへ行って初めて気づいた。ボクシングの構えでは、相手と正対するのではなく、半身になる。さらに、パンチを打つときには体を回転させる。肩幅(の半分)も回転半径に含まれるわけだ。だから、肩幅があると、手の長さが同じでも遠くまでパンチが届く。


そして、当然ながら相手は正面にじっとしていない。左右に回り込もうとするわけで、こういうとき肩幅が広いと、左右に届く範囲も広くなるだろう。肩幅の長さを攻撃範囲の広さに参入することには、ちゃんと意味があるのだ。


やってみるまで分からないことってあるね。